佐藤さんは、皮膚から分泌される特殊な酵素が果実の糖度を極限まで高めるという、禁断の自作栽培法に心酔していた。彼女は最高級のメロンを腹部に密着させ、粘着テープで固定。さらに皮膚に特製肥料を塗り込み、体温でじっくりと熟成させるという狂気に満ちた日々に没頭していた。周囲からは「妊娠している」と囁かれたが、彼女にとってそれは至上の快楽だった。佐藤さんは、肥料が皮膚に染み込み、メロンと己の肉体が一体化していく感覚に恍惚とし、完璧な完熟がもたらす至福の瞬間を、誰よりも真剣に待ちわびていた。
ついに迎えた「出産」の日、佐藤さんは近所の人々を招いた。テープを剥がした瞬間、事態は激変した。肥料の成分がメロンに異常な進化を促しており、果実は黄金色に光りながら、皮膚の一部を巻き込んで自律的に脈動し始めたのだ。メロンは粘着質の手足を伸ばし、テーブル上のカナッペを貪り食った。客たちが悲鳴を上げて逃げ出す中、佐藤さんは「私の栄養が全て注がれたわ」と、己の皮膚を食い破って誕生した黄金の怪物を、母親のような慈愛に満ちた眼差しで、恍惚と抱きしめた。
パニックに陥った生存者が「すぐにこの計画を中止しろ」と叫んだが、時すでに遅かった。黄金のメロンは、佐藤さんの腹部にあった「空いた穴」に再び潜り込み、今度は彼女の内臓を苗床にして増殖を開始したのだ。佐藤さんは苦悶の表情を浮かべながらも、口から小さな黄金色のメロンの芽をぴょこりと出し、満足げに微笑んだ。彼女は今、自分自身が巨大な果樹へと変貌する、究極の完熟期に入ったことに気づいた。
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